あっ日穀製粉のそばの国だより

豊かな自然に囲まれたそばの国信州から、日穀製粉が様々な情報をお届けします。

2011/08/06

蕎麦学入門

第3話 「正月の行事食と年越し蕎麦」

お正月料理といえば、御節(せち)料理と雑煮や汁粉などのお餅が、全国的に共通しています。

しかし餅の形は、東、西日本で大きく異なっているのです。

近畿地方以西の西日本と石川・福井の北陸二県は丸餅、一方東日本は切り餅(菱餅)です。

東日本でも新潟県の佐渡と山形県の庄内平野では、西日本における丸餅圏の飛地になっています。

北陸地方でも富山県は丸餅と切り餅の漸移地帯で、魚津など加賀藩の飛地では、

正月五日まで丸餅を食べ、以降切り餅になるといいます。

切り餅の方が作り方が簡便です。しかし西日本ではなぜ丸餅になるかというと、

照葉樹林帯の風土故に、切り餅にするとカビやすいからです。

さらに種子島以南の南西諸島では、丸餅に黒砂糖を入れてカビを防いでいます。

なお関西では、小豆飴を入れた丸餅を用い白味噌で煮付けした雑煮がつくられていますが、

雑煮の作り方も地域によってさまざまです。

歳取り魚は東日本では鮭、西日本では鰤(ぶり)を用いています。

その境界は長野県では東北信では鮭、中南信では鰤となっています。

結納蕎麦、棟上げ蕎麦、引越し蕎麦などとともに、

年越し蕎麦、正月蕎麦は、晴の食として重要視されてきました。

年の暮れに食べる年越し蕎麦は、つごもり蕎麦、晦日(みそか)蕎麦ともいわれています。

太陰暦の月の最終日を「つごもり」といい、

大晦日を「おおつごもり」ということから名づけられたと思われます。

江戸時代中期日本経済が発展し、文禄時代といわれたころから、

東日本の豪商の家では、年越し蕎麦を食べて家の繁栄を祈っていました。

それには何ごとも細く長く続くようにという願いが込められています。

いまでも東京はじめ、東日本では多くの家庭で年越し蕎麦が食べられています。

正月元旦には雑煮を食べる家が一般的ですが、

手打ち蕎麦もしくは饂飩(うどん)を食べて、昼食に雑煮をとる家もあります。

これが正月蕎麦ですが、「つるつる噛め噛め」鶴亀となり、縁起がよいのだといいます。

長崎県の対馬はかつて木場作(こばさく、焼畑農業)で、ソバの栽培が盛んでした。

ここでは、蕎麦餅がつくられています。

前監査役 市川健夫

日穀製粉株式会社 社内報『にっこくだより』連載記事「蕎麦学入門」